売掛金や手形の早期資金化を検討すると、でんさい(電子記録債権)の割引・譲渡とファクタリングのどちらを使うべきか迷うことがあります。どちらも「支払期日前に資金化する」点は共通ですが、取引先の参加が要るか・償還請求(遡求)の有無・スピード・コストが異なります。本記事では両者の違いを判断軸で整理し、当サイト掲載99社のデータで「でんさいを扱う会社」と「取引先の参加なしで即日資金化できる会社」の実態を示します。
判断軸は3つです。①取引先がでんさいネットの利用者か、②貸し倒れリスクを自社に残すか、③いつまでに資金が要るか。
でんさいは「発生・譲渡を電子記録で行う金銭債権」で(電子記録債権法 第2条)、支払企業(取引先)がでんさいで支払っていることが前提です。支払期日前でも譲渡・割引ができ、分割して利用でき、でんさいネットの案内では領収書の印紙代が不要とされています(でんさいネット でんさいを受け取る)。一方ファクタリングは請求書(売掛債権)の売買で、取引先の参加は不要、2社間なら通知も不要です。
取引先がでんさい利用者で、コストを優先し、遡求リスクを許容できるならでんさい割引。取引先が未参加・急ぎ・貸し倒れリスクを移したいならファクタリング。掲載99社(受付終了1社を除く98社、同じ会社が運営する掲載は1社として85社で集計)のうちでんさい対応を公式サイトで明記するのは4社(いずれも銀行・リース系、手数料・入金速度は公式LP記載なし)、2社間方式で公表最短が即日以内の会社は51社です(下の表・データ)。
1. でんさい(電子記録債権)とは
でんさいは、株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が記録機関となる電子記録債権で、電子記録債権法上は「その発生又は譲渡について…電子記録を要件とする金銭債権」と定義されています(電子記録債権法 第2条第1項)。紙の手形と異なり、紛失・盗難リスクがなく、領収書の印紙代が不要とされ、必要な分だけ分割して譲渡・割引できます。受取企業は支払期日前でも譲渡や割引で資金化でき、期日には口座に自動入金されます(でんさいネット でんさいを受け取る)。
利用には、自社と支払企業(取引先)の双方が窓口金融機関を通じてでんさいネットに利用登録していることが前提です。でんさいネットも「取引先がでんさいを利用しているか確認する」ことを利用開始手続きの一項目として案内しています(でんさいネット でんさいをはじめる)。割引は窓口金融機関の審査(与信)を伴い、割引料は金融機関ごとに決まります。
2. ファクタリングとは(おさらい)
ファクタリングは、保有する売掛債権(請求書)を売却して早期に現金化する手段です。でんさいネットへの登録は不要で、取引先がでんさいを使っていなくても利用できます。2社間方式なら取引先への通知も不要です。仕組みの基礎はファクタリングとは、2社間・3社間を含む型の全体像はファクタリングの種類(7つの型)を参照してください。
3. でんさいとファクタリングの違い(判断軸で比較)
| 判断軸 | でんさい(割引・譲渡) | ファクタリング |
|---|---|---|
| 対象 | 電子記録債権(発生・譲渡を電子記録で行う金銭債権) | 売掛債権(請求書) |
| 取引先の参加 | 必要(支払企業がでんさいで支払っていることが前提) | 不要(2社間なら通知も不要) |
| 事前準備 | 窓口金融機関を通じたでんさいネットへの利用登録 | 登録不要(会社ごとの申込・審査のみ) |
| 償還請求権(遡求) | 割引の条件は窓口金融機関ごと。電子記録債権には「電子記録保証」の仕組み(法2条9項)があり、割引時に譲渡人へ保証記録を求められることがあるため、不払い時に遡求されうる | 買取型は原則なし(ノンリコース)。償還請求権付きの契約は貸付けと同様の機能を持つおそれがある(金融庁) |
| 審査の対象 | 金融機関が利用者(自社)にも与信 | 主に売掛先の信用力 |
| スピード | 窓口金融機関の手続きによる(公表値なし) | 掲載98社(同じ会社が運営する掲載は1社として85社で集計)中、速度を公表する66社のうち54社が最短即日以内(2時間以内は28社) |
| コスト | 金融機関ごとの割引料(本記事で横断比較できる公表値なし) | 掲載98社(同じ会社が運営する掲載は1社として85社で集計)の公表値: 下限の中央値2.0%(公表56社)、上限の中央値10%(公表31社) |
| 印紙税 | でんさいネットの案内では領収書の印紙代が不要とされる | 書面契約は第15号文書として一律200円(電子契約なら不要) |
出典: でんさい側は電子記録債権法 第2条・でんさいネット公式サイト、ファクタリング側は当サイト掲載99社の公式サイト公表値(2026年9月26日時点、入金QUICKは2026年9月2日で新規申込受付終了のため除外し98社の公表条件から集計)。償還請求権付きファクタリングについては金融庁の注意喚起(金融庁 ファクタリングに関する注意喚起)、印紙税はファクタリングと消費税・税務を参照。
大きな違いは「取引先の参加が要るか」と「貸し倒れリスクを誰が持つか」です。でんさいは取引先の登録が前提で、電子記録債権法には「電子記録保証」の仕組みがあり、割引時に譲渡人へ保証記録を求められることがあります(電子記録債権法 第2条第9項)。ファクタリングは取引先非参加でも使え、買取型ならノンリコースで貸し倒れリスクを移転できます。
4. 掲載99社のデータで見る「でんさい対応」と「取引先非参加で即日」
当サイトの集計85社のうち、公式サイトででんさい(電子記録債権)の取扱いを明記するのは4社(三菱UFJファクター・りそな決済サービス・三井住友ファイナンス&リース・MUFGファイナンス&リーシング)で、いずれも銀行・リース系です(2026年9月25日確認)。方式は3社間または公式LP記載なし、手数料・入金速度・買取額は公式LP記載なし(要問合せ)で、オンライン完結を明記する会社はありません。でんさいを使った一括ファクタリングは、支払企業が主導して取引先(納入企業)の売掛債権をまとめて資金化する仕組みで、受取企業が単独で申し込む「急ぎの資金化」とは性格が異なります。
| 会社 | 方式 | 手数料(公表) | 入金(公表最短) | 買取額(公表) | オンライン完結 | 明記内容 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 三菱UFJファクター | 3社間 | 公式LP記載なし/要問合せ | 公式LP記載なし/要問合せ | 公式LP記載なし/要問合せ | × | 公式「1-1 でん括は、支払企業によるでんさいでのお支払いに、納入企業向けのファクタリング(債権買取)を組み合わせたサービ…」(でんさいの買取(でんさい一括ファクタリング)) |
| りそな決済サービス | 3社間 | 公式LP記載なし/要問合せ | 公式LP記載なし/要問合せ | 公式LP記載なし/要問合せ | × | 公式「貴社の納入企業さま宛の支払手段に、でんさいを利用し、当該でんさいをファクタリング会社が買い取ることで、 支払事務の合…」(でんさいの買取(でんさい活用型ファクタリング)) |
| 三井住友ファイナンス&リース | 3社間 | 公式LP記載なし/要問合せ | 公式LP記載なし/要問合せ | 公式LP記載なし/要問合せ | × | 公式「「でんさいファクタリング」もお取り扱いしております。 全国銀行協会(全銀協)を母体とするネットワークシステム「でんさ…」(でんさいファクタリング(ノンリコース買取)) |
| MUFGファイナンス&リーシング | 3社間 | 公式LP記載なし/要問合せ | 公式LP記載なし/要問合せ | 公式LP記載なし/要問合せ | 未公表 | 公式「売掛債権(売掛金・でんさい)を当社に売却することにより、早期の現金化が可能です。」(でんさいの買取) |
出典: 当サイト掲載99社の公式サイト公表値(2026年9月26日時点、掲載99社の公表条件から抽出)。未公表の項目は推定せず「公式LP記載なし」と表記しています。
対照的に、2社間方式(取引先の参加・通知なし)に対応し、公表最短が即日以内の会社は51社あります(手数料下限を公表する44社の中央値2.0%、うち26社は最短2時間以内、44社がオンライン完結。掲載99社の公表条件から集計)。「取引先がでんさい未参加で、急いで資金化したい」というニーズに対しては、ファクタリング側の選択肢のほうが圧倒的に多いのが実態です。速い順の一覧は入金スピード比較、即日対応の会社選びは即日対応ファクタリングを参照してください。
5. どちらを使うべき?
- でんさいが向くケース: 取引先(支払企業)がでんさいで支払っている/窓口金融機関との取引が安定している/継続的に資金化したい/遡求リスクを許容できる
- ファクタリングが向くケース: 取引先がでんさい未参加/取引先に知られたくない(2社間)/即日〜数日で必要/貸し倒れリスクを移転したい(買取型・ノンリコース)
製造業など手形・でんさい取引が残る業種では、支払企業主導のでんさい一括ファクタリング(表の5社)と、自社主導の2社間ファクタリングを状況で使い分けるのが現実的です(製造業のファクタリング)。個別の会社を選ぶ際は、上の表とファクタリング会社の選び方を参考にしてください。
6. 関連記事との使い分け
本記事は「でんさい割引とファクタリング」の違いに絞っています。紙の手形の割引との比較はファクタリングと手形割引の違い、銀行融資との比較はファクタリングと融資の違い、ビジネスローンとのコスト比較(実数)はファクタリングとビジネスローンの違い、ファクタリングそのものの仕組みはファクタリングとはにまとめています。
7. よくある質問
Q1. でんさいとファクタリングは何が違いますか?
A. 対象と仕組みが異なります。でんさいは『でんさいネット』上の電子記録債権を窓口金融機関を通じて割引・譲渡する手段で、自社・取引先双方の利用登録が前提です。ファクタリングは売掛債権(請求書)を売却して現金化する手段で、登録不要・取引先非参加でも使えます。
Q2. でんさいを使うには取引先の協力が必要ですか?
A. はい。でんさいは支払企業(取引先)がでんさいで支払うことで発生するため、自社と取引先の双方がでんさいネットに利用登録していることが前提です。取引先が未参加の場合は利用できません。一方ファクタリングは取引先の参加が不要で、2社間方式なら通知も不要です。
Q3. 償還請求権(遡求)の違いはありますか?
A. でんさいには電子記録保証(電子記録債権法 第2条第9項)の仕組みがあり、割引時に譲渡人へ保証記録を求められることがあるうえ、割引の条件は窓口金融機関ごとに決まるため、債務者が支払わない場合に利用者が遡求されることがあります。一方、買取型のファクタリングは原則として償還請求権なし(ノンリコース)で、売掛先が倒産しても利用者は返済不要となり、貸し倒れリスクを移転できます。
Q4. コストはどちらが安いですか?
A. でんさいの割引料は窓口金融機関ごとに決まり、横断比較できる公表値はありません。ファクタリングは当サイト掲載98社(受付終了1社を除く、同じ会社が運営する掲載は1社として85社で集計)の公表値で手数料下限の中央値が2.0%、上限の中央値が10%です。ファクタリングには登録不要・スピード・ノンリコースといった利点があるため、コストだけでなく目的で選ぶことが重要です。
Q5. 製造業ですが手形・でんさいとファクタリングどちらがよいですか?
A. 取引先もでんさいネットを利用し、継続的に資金化したいならでんさい、取引先が未参加・スピード優先・貸し倒れリスクを避けたいならファクタリングが向いています。掲載99社(受付終了1社を除く98社、同じ会社が運営する掲載は1社として85社で集計)ではでんさい対応を公式サイトで明記するのは銀行・リース系の4社、2社間で即日以内の会社は51社です。状況に応じて使い分けるのが現実的です。
更新履歴
- 集計の日付(…時点)を会社データの最新の確認日(2026年9月26日)に更新
- 会社を評価・順位づけする表現(最上級・推奨の語など)を、その会社の公式サイトの文言(出典つき)か掲載データに合わせて書き直し、株式会社No.1の買取額を公式サービスページの記載(50万円〜3億円)に訂正
- 条件別の集計では条件にあてはまる掲載の数値を使うようにし、同じ会社の掲載の順を集計に使う掲載と同じ3段階で決めて再計算
- 同じ会社の掲載を1社として数える集計を、条件別の集計にも同じ規則で当てて再計算(同じ会社の2つの掲載を2社と数えていた箇所を訂正)
- 公式サイトのページどうしで手数料の記載が異なる会社の値を、ページの優先順位(サービス・料金>よくある質問>LP・広告・トップ>ブログ・コラム)で決め直し、採用しなかった公式の記載を各社のページに併記
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