1. 契約書の基本構造
ファクタリングは、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です(金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起)。契約書は「債権譲渡契約書」などの名前の書類で、主に次の条項が入ります。条の番号や並び順は会社によって異なります。
主な条項
- 契約の目的(債権譲渡の合意)
- 譲渡対象債権の特定
- 譲渡代金(買取額)と手数料
- 支払方法・期日
- 譲渡人(事業者)の表明保証
- 集金代行の委任(2社間の場合)
- 債権譲渡登記
- 償還請求権(リコース/ノンリコース)
- 契約解除・損害賠償
- 守秘義務
- 管轄裁判所
これらの条項のうち、償還請求権・手数料・解約条件は特に重要です。
2. 絶対に確認すべき条項
① ノンリコース条項(償還請求権なし)
契約書に「償還請求権なし」「ノンリコース」「買取型」が明記されているか確認してください。金融庁は、譲渡した債権の集金を任された売主(利用者)が集金できなかった場合に、売主が債権を買い戻す、または売主自身の資金でファクタリング会社に支払うこととされている取引を、貸金業に該当するおそれがある例に挙げています。貸金業に当たるかは、ノンリコースの規定があるかなどの形式だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されます(金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起)。ノンリコースと書かれていても、ほかの条項で売掛先の不払いの負担が利用者に戻っていないかを確かめてください(4. 危険な条項のサイン)。
② 手数料・買取額の明記
基本手数料だけでなく、総額での手取り額を契約書で明記してもらいます。「手数料率○%、買取額○円、手取り額○円」と数字で記載されているかを確認します。
③ 追加費用の内訳
債権譲渡登記費用・事務手数料・印紙代・振込手数料などの追加費用が明記され、誰が負担するかが明確になっているか。
④ 集金代行の条件(2社間の場合)
売掛金を回収してからファクタリング会社へ送金する期日と、遅れた場合の扱いを確認します。あわせて、売掛先から集金できなかった場合に利用者が買い戻す・自分の資金で支払う定めがないかを見てください。金融庁が貸金業に該当するおそれがある例に挙げている形です(上の①)。
⑤ 解約・キャンセル条件
契約後でもキャンセル可能な期間、キャンセル料の有無を確認。
⑥ 債権譲渡登記の有無
登記する・しない、登記費用の負担者を明記。登記により売掛先に知られる可能性も説明されているか。契約段階で提出済みの必要書類(請求書・通帳など)と契約書の債権特定条項の内容が一致しているかも確認しておくと安心です。登記が二重譲渡をどのように防ぐのかは売掛債権の二重譲渡リスクと防止策を参照してください。
3. 手数料条項を99社の実データで検証する
契約書の手数料が妥当かどうかは、掲載社の公表条件と突き合わせると判断しやすくなります。当サイト掲載99社のうち受付終了1社を除く98社の公表条件(data/companies.json、2026年9月26日時点)は次の通りです(6月時点の集計は手数料実態調査2026)。
| 指標 | 掲載98社の公表条件(2026年9月26日時点、同じ会社が運営する掲載は1社として85社で集計) |
|---|---|
| 下限手数料を公表している会社 | 56社(85社中) |
| 下限手数料の中央値 | 2.0%(公表56社) |
| 上限手数料まで公表している会社 | 31社(85社中) |
| 上限手数料の中央値 | 10%(公表31社) |
| 上限20%以上の会社 | 2社(上限を公表する31社のうち) |
ここから導ける契約書チェックの目安は3つです。
- 提示された手数料が上限の中央値10%を大きく超えていないか。上限を公表する31社でも上限20%以上は2社しかなく、それを超える提示は相見積もりで再検証すべき水準です
- 「手数料◯%〜」の下限だけで判断しない。上限まで公表しているのは85社中31社(2026年9月26日時点、同じ会社が運営する掲載は1社として集計)のみ。契約書では実際に適用される率と手取り額を数字で確認する
- 基本手数料以外の内訳を確認する。債権譲渡登記費用・事務手数料・振込手数料などの構成は手数料の内訳解説を参照。「実質手数料」は総コストで比較する
なお、赤字決算・税金滞納など資金繰りが厳しい状況でも、提示された手数料を上の公表条件と比べる確認は欠かせません(赤字・税金滞納でも使えるファクタリング)。金融庁は、受け取る買取代金が債権額に比べて著しく低額なケースを偽装ファクタリングの疑いがあるとし、高額な手数料を支払うとかえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険性があると注意を促しています(金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起)。実際の被害パターンはトラブル事例と対処法で解説しています。
4. 危険な条項のサイン
次のような条項がある契約書は、署名する前に修正を求めるか、弁護士に相談してください。金融庁は、少しでも心配な点があれば法律の専門家である弁護士に相談するよう呼びかけています。下の裁判例は、金融庁のファクタリングの利用に関する注意喚起に掲載されているものです。
赤信号の条項例
- 集金を任された利用者が売掛先から集金できなかった場合に、債権を買い戻す → 金融庁が貸金業に該当するおそれがある例に挙げている形
- 同じ場合に、利用者が自分の資金でファクタリング会社に支払う → 同じく金融庁が挙げている例
- 「償還請求権あり」(売掛先が払わないとき、利用者が支払う義務を負う) → 不払いの負担が利用者に残ります。貸金業法は適用されないと判断された裁判例では、ファクタリング会社が償還請求権を持たず、利用者も買戻しを予定していないことが理由の一つでした(東京地裁令和2年9月18日判決)
- 売掛先に不払いの兆候がないこと(抗弁事由がない・支払停止の状態にない・破産手続き開始原因がないなど)まで利用者が表明保証する → ノンリコースの規定があっても、売主に債務の保証を求めているのに等しいとして、金銭消費貸借契約に該当すると判断された裁判例があります(東京地裁令和4年3月4日判決)
- 売掛先が払わなかった場合に、利用者が債権額以上をファクタリング会社に支払う旨の公正証書を作る → 貸金業法上の貸付けに当たると判断された裁判例があります(東京高裁令和3年7月1日判決)
- 売掛先の不払いを代表者個人が保証する → 不払いの負担が利用者側に残ります。金融庁が紹介する裁判例は、売掛先の不払いのリスクがファクタリング会社に移っているかを判断材料の一つにしています
- 債権の額面と関係のない金額でお金をやり取りする → ファクタリング会社が不払いのリスクをほとんど負っていないことなどとあわせて、金銭消費貸借契約に準じるものと判断された裁判例があります(大阪地裁平成29年3月3日判決)
- 受け取る買取代金が債権額に比べて著しく低い → 金融庁は偽装ファクタリングの疑いがあるとしています
- 契約書の控えを渡さない・手数料が書かれていない → 条件を後から確かめられません。控えや条件を書いた書面を受け取れない場合は契約しないでください
売買としてのファクタリングの手数料に法的な上限はなく、手数料を年利に換算した率だけでは違法かどうかは決まりません。ただし、実質が貸付けと判断されれば、利息制限法1条(元本に応じ年15〜20%を超える部分は無効)と出資法5条(業として年20%を超える利息の契約は刑事罰の対象)の上限金利規制が適用されます。金融庁も、貸金業を行う場合は両法の上限金利を守る必要があるとしています。
違法業者の詳細は違法ファクタリング業者の見分け方を参照してください。
5. 契約前のチェックリスト
最終チェック10項目
- 契約書のタイトルは「債権譲渡契約書」か(「金銭消費貸借契約書」なら、お金を借りて返す契約です=民法587条。タイトルが債権譲渡でも、中身によって貸金業に当たると判断されることがあります)
- ノンリコース(償還請求権なし)と明記され、集金できなかった場合の買戻しや自己資金での支払いの定めがないか
- 手数料率と手取り金額が数字で明記されているか
- 追加費用の項目・金額・負担者が明確か
- 集金代行の送金期日が明確か(2社間の場合)
- 契約書の控えを受け取れるか
- 運営会社の法人登記・代表者名が明記されているか(商号と所在地は国税庁の法人番号公表サイトで照合できます)
- 解約・キャンセル条件が明記されているか
- 管轄裁判所の所在地が合理的か(遠隔地指定は要注意)
- 不明点を質問した時に明確に回答してもらえるか
すべて確認できても、貸金業に当たるかは契約書の形式だけでなく実態に照らして判断されます(金融庁)。少しでも心配な点があれば、署名の前に弁護士に相談してください。
6. 不利な条項を見つけたら
不利な条項への対応
- 修正を依頼: 条項の修正・削除を求め、応じてもらえない場合は署名しない
- 他社に変更: 複数社から見積もりを取っておけば切り替えが容易。乗り換え時の二重譲渡・登記の抹消・解除条件の確認手順はファクタリングの乗り換えガイド
- 弁護士に相談: 金融庁は、少しでも心配な点があれば法律の専門家である弁護士に相談するよう呼びかけています
- 情報提供: 金融庁は、一般的な相談や情報提供は下の相談窓口(法テラスを除く)に連絡するよう案内しています
相談先
金融庁のファクタリングの利用に関する注意喚起に載っている相談窓口と、法テラスの窓口です(2026年10月3日確認)。
- 金融庁 金融サービス利用者相談室: 0570-016811(IP電話からは03-5251-6811、平日10時〜17時)
- 多重債務相談窓口: 全国の財務局の多重債務相談窓口など(金融庁 多重債務についての相談窓口)
- 警察相談専用電話: #9110(悪質な取立ての被害は警察へ)
- 日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター: 0570-051051(IP電話からは03-5739-3861、9時〜17時・土日祝休日と年末年始を除く)
- 消費者ホットライン: 188(最寄りの消費生活相談窓口を案内)
- 法テラス・サポートダイヤル: 0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時・祝日と年末年始を除く。問い合わせの内容に応じて法制度や相談窓口を案内する窓口で、オペレーターは個別の法律相談をしません。法テラス)
償還請求や買戻しの定めがあるなど、貸付けに近い条件を求められた場合は、相手が貸金業の登録を受けているかを金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで確かめられます。貸金業を営むには財務局又は都道府県の登録が必要で、無登録営業は刑事罰の対象です(貸金業法47条)。
信頼できる会社を選ぶことが第一です。検討中の会社は会社一覧から比較できます。
7. よくある質問
契約書に署名する前にどのくらい時間をもらえる?▼
検討の時間は会社や契約によって異なります。「今すぐ署名しないと条件が変わる」などと急かされても、手数料・償還請求権・解約条件の条項を読み終えるまでは署名しないでください。大口・長期・包括契約など重要条項が多い契約は、署名の前に弁護士などの専門家に確認してもらうと安全です(金融庁も、少しでも心配な点があれば弁護士に相談するよう呼びかけています)。契約書のPDFや控えを保存し、後日内容を再確認できる状態にしておくことも重要です。
契約書のひな型を事前にもらえる?▼
署名の前に、契約書のひな型(電子契約なら締結前の契約書の全文)を見せてもらうよう依頼してください。事前に見せてもらえない場合は、条項を確かめないまま契約することになるため避けるのが安全です。重要条項(手数料・償還請求権・解約条件・集金代行義務)は、顧問税理士・弁護士等と一緒に確認する時間を確保してください。
クーリングオフはできる?▼
原則できません。特定商取引法のクーリングオフは申込者が営業のために契約する場合には適用されず(特定商取引法26条1項1号)、法人・個人事業主が事業資金のために結ぶ契約では、訪問や電話で勧誘された場合でも原則として適用はありません。解除できるかは契約書の解除条項によるため、署名前の確認が重要です。例外になりうる場面はファクタリングのクーリングオフ・解約ルールで解説しています。
契約書で必ず確認すべき条項は?▼
①手数料率・算定基準②償還請求権の有無(ノンリコースか)③集金代行義務の範囲④債権譲渡登記の有無・費用負担⑤契約解除・違約金条項⑥取引先への通知条件⑦損害賠償・免責条項、の7点です。特に、集金を任された利用者が集金できなかった場合に債権を買い戻す、または自分の資金で支払う定めがある取引は、金融庁が貸金業に該当するおそれがある例に挙げています(金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起)。条項の文言が曖昧な場合は書面で説明を求めてください。
給与ファクタリング契約は違法?▼
給与ファクタリングは、最高裁決定(令和5年2月20日 第三小法廷)で「貸金業法・出資法にいう貸付け」に当たると判断され、金融庁も、業として、個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは貸金業に該当するとしています(金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起・最高裁決定抜粋)。貸金業の登録を受けずに貸金業を営むことは禁止され、刑事罰の対象です(貸金業法11条1項・47条)。金融庁は、登録のないヤミ金融業者に年率換算で数百〜千数百%になる手数料を支払わされたり、悪質な取立ての被害を受けたりする危険性があるとして、利用しないよう呼びかけています。給与ファクタリング契約に署名してしまった場合は弁護士会または法テラスに相談を。
電子契約の締結方法は?▼
電子契約サービスでは、メールなどで届いたリンクから契約書の全文を確認し、画面上で署名して締結します。電子署名法により、本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等は、真正に成立したもの(本人の意思に基づき作成されたもの)と推定されます(法務省 電子署名法の概要と認定制度について)。締結後の契約書ファイルを自社で保存できるか、サービス上の保管期間・アクセス権限も事前に確認してください。
反社条項・表明保証条項とは?▼
反社条項は「契約当事者が暴力団等の反社会的勢力でないこと」を確約する条項です。表明保証条項は「申告した内容(売掛金の存在・金額・弁済期等)が真実であること」を利用者が保証する条項で、虚偽があれば契約解除・損害賠償の根拠になりえます。ただし、売掛先に不払いの兆候がないこと(抗弁事由がない・支払停止の状態にない・破産手続き開始原因がないなど)まで利用者が表明保証する契約について、ノンリコースの規定があっても売主に債務の保証を求めているのに等しいとして、金銭消費貸借契約に該当すると判断された裁判例があります(東京地裁令和4年3月4日判決、金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起)。表明保証の範囲が売掛金の存在などにとどまっているかを確認してください。なお、虚偽の請求書でファクタリングを申し込むと詐欺罪(刑法246条)に問われるおそれがあります。
契約解除時の違約金は?▼
解除できる場合と条件、違約金の有無と金額は契約書の定めによります。署名の前に、入金前・入金後それぞれの解除の可否と違約金、継続契約なら解除の予告期間を確認してください。高すぎる違約金を求められた場合は弁護士に相談してください。
契約後のトラブル対応窓口は?▼
まず契約書に記載の運営会社窓口(電話・メール)に連絡します。解決しない場合の相談先として、金融庁は注意喚起のページで、金融サービス利用者相談室(0570-016811)、多重債務相談窓口、警察相談専用電話(#9110)、日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター(0570-051051)、消費者ホットライン(188)を案内しています(金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起)。悪質な取立ての被害は警察に相談してください。契約の法的な判断は弁護士へ。どこに相談すればよいか分からない場合は、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374)が法制度や相談窓口を案内しています。契約書・通信履歴・振込記録は全て保存し、証拠として提出できる状態にしてください。
更新履歴
- 悪質業者の事例・給与ファクタリングの扱いと被害時の相談先を、金融庁・警察・法テラスなどの公的な出典に合わせて訂正
- 償還請求権なしの買取型を売却として処理する条件(企業会計基準を適用する会社では第三者対抗要件も必要)や相談窓口の案内など、出典より強く書いていた記述を一次資料に合わせて訂正
- 償還請求権(リコース)・買戻しの条件がある契約の扱いを、金融庁の注意喚起(裁判例を含む)などの公的な出典に合わせて訂正
- 集計の日付(…時点)を会社データの最新の確認日(2026年9月26日)に更新
- 公式サイトのページどうしで手数料の記載が異なる会社の値を、ページの優先順位(サービス・料金>よくある質問>LP・広告・トップ>ブログ・コラム)で決め直し、採用しなかった公式の記載を各社のページに併記
更新履歴は編集履歴から自動生成しています(直近5件、表現の微修正や内部的な変更は除く)。
