1. 法的にクーリングオフは適用されるか
結論から言うと、法人・個人事業主が事業資金のために結ぶファクタリング契約には、特定商取引法のクーリングオフは原則として適用されません。
クーリングオフ制度の仕組み
クーリングオフの代表的なものは、特定商取引法が訪問販売や電話勧誘販売などについて定める制度です。申込者等は、法律で定められた書面(申込みや契約の内容を記した書面)を受け取った日から起算して8日を経過するまでは、書面または電磁的記録で申込みの撤回や契約の解除ができ、事業者はそれに伴う損害賠償や違約金を請求できません(訪問販売は同法9条、電話勧誘販売は同法24条)。ファクタリングとの関係は次のとおりです。
- 事業者間取引: 特定商取引法の訪問販売・電話勧誘販売の規定(クーリングオフを含む)は、申込者が「営業のために若しくは営業として」締結する契約には適用されません(特定商取引法26条1項1号)。法人・個人事業主が事業資金のために結ぶファクタリング契約はこれに当たります
- 消費者契約法も対象外: 同法の「消費者」は個人のうち「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合」を除くと定義されているため(消費者契約法2条1項)、事業資金のための契約には適用されません
- 貸金業法非適用: ファクタリングは債権の売買であり貸付ではないため、貸金業法の枠外です。ただし金融庁は、経済的に貸付けと同様の機能を持つ取引は貸金業に該当するおそれがあると注意喚起しており、名称ではなく契約の実態で判断されます(金融庁 注意喚起)
ただし契約書や法律の定めで解約できる場合がある
クーリングオフが使えなくても、まだ契約が成立していない審査の申込みの段階なら取りやめることができ、成立した後も、契約書の解約(解除)の定めや法律の定めで解除の権利がある場合は解除できます(民法540条1項)。契約前・契約後で扱いが異なります。
2. 契約前のキャンセル
契約が成立する前のキャンセル
契約をするかどうかは、法令に特別の定めがある場合を除き、自由に決められます(民法521条1項)。見積もりを取っただけ、審査の申込みをしただけで、まだ契約が成立していない段階なら、取りやめることができます。ただし、契約の内容を示して締結を申し入れる「申込み」をした後は、承諾の期間を定めた申込みはその期間内は撤回できないなど、撤回が制限されることがあります(民法523条1項・525条1項。撤回する権利を留保した場合を除く)。契約は、申込みに対して相手方が承諾したときに成立し、法令に特別の定めがある場合を除いて書面がなくても成立します(民法522条)。電話やメールで条件に同意する前に、取りやめるかどうかを決めてください。
キャンセル方法
- メール・電話で「契約を見送ります」と伝える
- 記録が残るよう、メールなど文字で伝える
- 申込みの段階でキャンセル料などを払う約束(申込書・利用規約の定め)をしていないか確認する
注意点
- 複数社に見積もりを依頼して比べ、1社に決めたら他社には見送りを伝える
- 契約前の取りやめにキャンセル料を求められたら、どの約束に基づく請求かを書面で示してもらい、支払う前に弁護士に相談する
- 脅すような要求や悪質な取立てを受けたら警察に相談する(金融庁も、悪質な取立ての被害は警察に相談するよう案内しています。金融庁 注意喚起)
3. 契約後の解約
契約成立後の解約
契約が成立した後に一方的に解約(解除)できるのは、契約書に解除の定めがある場合か、法律の定めで解除の権利がある場合です。解除は相手方への意思表示で行い、いったんした解除の意思表示は撤回できません(民法540条)。法律の定めの例として、ファクタリング会社が約束した日に代金を支払わないときは、相当の期間を定めて支払いを催告し、その期間内に支払いがなければ解除できます(民法541条。不払いが契約と取引上の社会通念に照らして軽微なときを除く)。
契約書で確かめる解約の項目
- 解約できる時期: 入金の前か後か、いつまでに申し出るか
- 解約料・違約金: あるかどうか、ある場合の額と計算方法
- 通知の方法と宛先: 書面か電子メールか、どこに送るか
- 入金後の扱い: 受け取った代金の返し方と手数料の扱い
- 継続契約の場合: 解約の予告期間・最低契約期間・途中解約の費用
当サイトは掲載各社の解約条件を集計していないため、期間や金額の目安は示していません。契約書の定めで確認してください。
入金後の解約
入金の後は、ファクタリング会社は代金の支払いを済ませています。解除の権利を使って解除すると、双方が相手方を元の状態に戻す義務を負い(第三者の権利を害することはできません)、受け取ったお金は受け取った時からの利息を付けて返します(民法545条1項・2項)。解除の権利がない場合は、ファクタリング会社が応じなければ解除できず、話し合いでやめる場合の精算はその合意の内容によります。やめるかどうかは入金の前に決め、契約書の解約の定めと費用を確かめてください。
なお金融庁は、売掛金の集金を任された売主が集金できなかった場合に売掛金を買い戻すこととされている取引などを、貸金業に該当するおそれがある例として挙げています(金融庁 注意喚起)。契約書の該当する条項の確かめ方は契約書のチェックポイントで説明しています。
継続契約の解約
毎月の売掛金を続けて譲渡する継続契約では、解約の予告期間・最低契約期間・途中解約の費用を契約書で確認します。予告期間を守れば違約金がかからないかどうかも、契約書の定めによります。
4. トラブル時の対処
トラブルの例
- キャンセルを求めたが高額なキャンセル料を請求された
- 契約後に手数料が事前説明と異なっていた
- 契約書の控えをもらえない
- 解約を申し出たら脅迫された
- 業務の平穏を害するような取立てを受けた
対処の基本原則
- 記録を残す: メール・録音・LINEの保存
- 冷静に法的根拠を確認: 契約書の条項を熟読
- 弁護士に相談: 金融庁は、少しでも心配な点があれば法律の専門家である弁護士に相談するよう呼びかけています(金融庁 注意喚起)
- 悪質な取立ては警察へ: 金融庁は、悪質な取立ての被害は警察に相談するよう案内し、権利の実行でも、権利の範囲または社会通念上一般に忍容すべき程度を逸脱すれば違法となり、恐喝罪・脅迫罪が成立することがあるとした最高裁判決(昭和27年5月20日)を挙げています(金融庁 注意喚起)
- 情報提供: 金融庁は、一般的な相談や情報提供は注意喚起に載っている相談窓口(下の「5. 相談先一覧」)に連絡するよう案内しています
悪質業者への対抗手段
- 弁護士による通知書の送付
- 裁判所の民事調停(当事者が互いに譲り合い、実情に合った解決を図る手続で、民事に関する紛争なら申し立てられます。民事調停法1条・2条)
- 民事訴訟での争い(60万円以下の金銭の支払いを求める訴えは、簡易裁判所の少額訴訟も選べます。同じ簡易裁判所で同じ年に使える回数には上限があります。民事訴訟法368条1項)
- 警察への刑事告訴
5. 相談先一覧
金融庁が案内している相談窓口
金融庁のファクタリングの利用に関する注意喚起に載っている相談窓口です(2026年10月2日確認)。
- 金融庁 金融サービス利用者相談室: 0570-016811(IP電話からは03-5251-6811、平日10時〜17時)
- 多重債務相談窓口: 全国の財務局の多重債務相談窓口など(金融庁 多重債務についての相談窓口)
- 警察相談専用電話: #9110(悪質な取立ての被害は警察へ)
- 日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター: 0570-051051(IP電話からは03-5739-3861、9時〜17時・土日祝休日と年末年始を除く)
- 消費者ホットライン: 188(最寄りの消費生活相談窓口を案内)
法律相談
- 弁護士: 金融庁は、少しでも心配な点があれば法律の専門家である弁護士に相談するよう呼びかけています。金融庁の多重債務についての相談窓口のページは、その他の法律相談の窓口として法テラス・日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会を挙げています
- 法テラス・サポートダイヤル: 0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時・祝日と年末年始を除く。問い合わせの内容に応じて法制度や相談窓口を案内する窓口で、オペレーターは個別の法律相談をしません。法テラス)
- 法テラスの無料法律相談: 収入と資産が一定の基準以下であることなどの条件があり、法人・組合などの団体は対象外です(1つの問題につき3回まで。法テラス よくあるご質問)
相談の前に、契約書・振込の記録・やり取りの記録を手元にそろえておきます。
6. よくある質問
契約後すぐキャンセルしたら本当に解約料が発生する?▼
解約料の有無と額は、契約書や申込みの際に同意した書面(申込書・利用規約など)の定めによります。契約が成立した後に一方的に解約(解除)できるのは、契約書の解除の定めか法律の定めで解除の権利がある場合で、解除は相手方への意思表示で行います(民法540条1項)。解除の権利がない場合は、ファクタリング会社が応じなければ解除できず、話し合いでやめる場合の精算はその合意の内容によります。解約料を払う約束をしていないのに請求された場合は、どの定めに基づく請求かを書面で示してもらい、支払う前に弁護士に相談してください。
「クーリングオフできる」と言われたが本当?▼
法人・個人事業主が事業資金のために結ぶファクタリング契約には、特定商取引法のクーリングオフは原則として適用されません(同法26条1項1号)。クーリングオフができると説明された場合は、どの法律や契約書のどの定めに基づくのかを書面で確かめてください。契約後にやめられるかどうかは、契約書の解約(解除)の定めや法律の定めによります。
継続契約の途中解約に違約金はかかる?▼
解約の予告期間・最低契約期間・途中解約の違約金は、契約書の定めによります。当サイトは掲載各社の継続契約の解約条件を集計していないため、一般的な期間や金額は示していません。契約の前に、①解約の予告期間②最低契約期間③途中解約の違約金の計算方法④解約までに譲渡した売掛金の扱い、を確認してください。高すぎる違約金を求められた場合は、支払う前に弁護士に相談してください。
入金後のキャンセルは可能?▼
入金後に一方的に解除できるのは、契約書の解除の定めか、相手方の債務不履行など法律の定めで解除の権利がある場合です(民法540条1項)。解除の権利を使って解除すると、双方が相手方を元の状態に戻す義務を負い(第三者の権利を害することはできません)、受け取ったお金は受け取った時からの利息を付けて返します(民法545条1項・2項)。解除の権利がない場合は、ファクタリング会社が応じなければ解除できず、話し合いでやめる場合の精算はその合意の内容によります。やめるかどうかは入金の前に決め、契約書の解約の定めと費用を確かめてください。
契約解除通知の方法は?▼
契約書に通知の方法や宛先の定めがあれば、それに従います。後で内容と日付を示せるよう、書面で送ります。内容証明郵便では郵便物の文書の内容が証明され(郵便法48条1項)、差し出された年月日が文書に記載されます(同法58条1号)。メールや電話だけで済ませず、送った書面の控えと、解除の根拠にした契約書の条項を記録に残してください。通知書の作成は弁護士に相談することもできます。
悪質業者に対する解約は?▼
法外な違約金を求められた場合は、公序良俗違反(民法90条)などを理由に無効を主張できる可能性があります。なお消費者契約法は、事業のために契約する法人・個人事業主には適用されません。支払う前に弁護士に相談してください(金融庁は、少しでも心配な点があれば弁護士に相談するよう呼びかけています)。脅すような要求や悪質な取立てを受けたら警察に相談してください(金融庁も、悪質な取立ての被害は警察に相談するよう案内しています)。一般的な相談や情報提供は、金融庁の注意喚起に載っている相談窓口に連絡します(金融庁 注意喚起)。契約書・振込記録・通信履歴は保存しておいてください。
クーリングオフが認められる例外は?▼
原則ファクタリングにクーリングオフはありません。特定商取引法のクーリングオフは申込者が営業のために契約する場合には適用されず(同法26条1項1号)、消費者契約法も事業のために契約する個人を「消費者」から除いています(同法2条1項)。したがって、法人・個人事業主が事業資金のために結ぶ契約では、訪問や電話で勧誘された場合でも原則として適用はありません。保護が問題になり得るのは、個人が給与を対象に「給与ファクタリング」と称する契約を結んだ場合など、事業目的でなく消費者としての契約と評価される場面に限られます。該当するかの判断は弁護士・消費生活センターに相談してください。
違約金の相場は?▼
当サイトは掲載各社の違約金の定めを集計していないため、相場の数値は示していません。違約金の額は契約書の定めによります。契約で定めた違約金は損害賠償額の予定と推定されます(民法420条1項・3項)。法外な額の違約金は、公序良俗違反(民法90条)などを理由に無効を主張できる可能性があります。事業のための契約には消費者契約法は適用されません(同法2条1項)。高すぎると感じたら、支払う前に弁護士に相談してください。
解約後の取引先との関係は?▼
2社間で取引先に譲渡を知らせていない場合、取引先の支払先は元のままです。債権譲渡登記をしていた場合は、譲渡が解除などで効力を失ったときに譲渡人と譲受人が抹消登記を申請できるので(動産・債権譲渡特例法10条1項2号)、抹消の扱いを確認してください。3社間で取引先に譲渡を通知した、または取引先が承諾した場合は、支払先が元に戻ったことを取引先に知らせる必要があります。民法は、債権の譲渡は譲渡人が債務者に通知をするか債務者が承諾をしなければ債務者に対抗できないと定めています(民法467条1項)。解約で売掛金を戻すときも、戻す側のファクタリング会社から取引先に通知してもらうか、取引先の承諾を得てください。通知の書面の形式は契約書の定めも確認してください。
解約後すぐに別社で契約できる?▼
同じ売掛金を別の会社に譲渡するのは、前の会社との契約が解除などで効力を失ったことを書面で確かめてからにしてください。前の譲渡が残っていることを隠して同じ売掛金を譲渡し、代金を受け取ると、詐欺罪(刑法246条)に問われるおそれがあります。債権譲渡登記をしていた場合は、抹消登記の扱いも確認します(動産・債権譲渡特例法10条1項2号)。別の売掛金を他社に譲渡する場合も、前の契約が継続契約で、これから発生する売掛金も譲渡の対象にしていないかを確認してください。手順はファクタリングの乗り換えガイドで説明しています。
解約トラブルの相談先は?▼
まず契約書に記載の窓口に、解約の条件を書面で確かめます。解決しない場合の相談先として、金融庁は注意喚起のページで、金融サービス利用者相談室(0570-016811)、多重債務相談窓口、警察相談専用電話(#9110)、日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター(0570-051051)、消費者ホットライン(188)を案内しています(金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起)。契約の法的な判断は弁護士へ。どこに相談すればよいか分からない場合は、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374)が法制度や相談窓口を案内しています。話し合いで解決しない場合は、裁判所の民事調停(民事調停法2条)や、60万円以下の金銭の支払いを求める少額訴訟(簡易裁判所の手続で、同じ簡易裁判所で同じ年に使える回数には上限があります。民事訴訟法368条1項)という手続もあります。
更新履歴
- 解約料のよくある質問で、契約の成立後に一方的に解約(解除)できる場合と、話し合いでやめる場合の精算の説明を明確化
- 解約・クーリングオフの説明を、民法・特定商取引法の条文(e-Gov法令)とその限定条件に合わせて訂正
- クーリングオフ・解約・違約金の説明とトラブル時の相談先を、公的な出典(e-Gov法令・金融庁・法テラス)に合わせて訂正
- 監修者の表示を削除
- クーリングオフの適用範囲の表現を修正
更新履歴は編集履歴から自動生成しています(直近5件、表現の微修正や内部的な変更は除く)。
